-

@ 逆砂 参角
2024-05-11 06:01:39
**『マーダーボット・ダイアリー』マーサ・ウェルズ著・中原尚哉訳・東京創元社**
「マーダーボット」と呼ばれる主人公“弊機”は保険会社に所属する人型警備ユニット。顧客に貸し出される警備システムの「構成機体」でありながら、自分で統制モジュールをハッキングして、“自由”な存在になっている。でも彼がその“自由”を使って行うのは大好きな連続ドラマ『サンクチュアリムーン』を繰り返し繰り返し見ること。――とにかく“弊機”が可愛い! 一人称を“弊機”と訳した訳者さんがすごい! 人間の作ったドラマにどハマりしながら「人間とは付き合いたくない」と思ってる自意識過剰な引きこもりオタbotによる一人称日記形式のSF小説。安倍吉俊さんの表紙イラストも可愛いので是非!
**アーケードゲーム・タイポグラフィ ビットマップ書体の世界 (大曲都市・著/グラフィック社)**
パックマンのフォントを覚えているでしょうか?
本書は、70〜90年代のアーケードゲーム黄金期に生まれた様々なゲームのために作られた、個性豊かなフォントを取り上げています。
そこはわずか8✕8ピクセルの小さな文字の世界。その中で工夫を凝らされた数百にも及ぶフォントにはひとつとして同じものはなく、視認性と世界観の演出を追求した試行錯誤と進化の歴史を感じることでしょう。
いわゆる8bit風、ピクセルアートがひとつのジャンルとして市民権を得て久しいですが、キャラクターや背景だけではなく、フォントにもこんな奥深い世界があることを感じてほしいと思います。
**ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (帚木蓬生/朝日選書/朝日新聞出版)**
本書は、医師たちが「ネガティブ・ケイパビリティ=答えの無い状況を耐える力」を発見するまでの道程からはじまります。以降、それが「医療」、「創作」、「教育」、および平和の源泉たる「寛容」の点から、実践的にも極めて重要である理由を述べています。
本書は読み物として面白いだけでなく、文献の列挙など参考書としても役に立つ様に書かれています。物語作家であり、現役医師でもある帚木氏ならではです。多くの人に一読をお薦めできます。
面白く読め、困難に直面した際に誰もが持つ根源的な力について、理解を助けてくれます。豊富な解説は、現代的な問題を俯瞰する際に、辞書的に参照することもできる一冊です。
**王様のプロポーズ 極彩の魔女 (橘公司/富士見ファンタジア文庫)**
この物語の始まりは不意に誘 (いざな) われた異世界、目の前で殺されたのは世界最強の魔女。
彼女に託された最後の魔法を受け取り、その犯人に迫っていく。
一見するとシリアスに感じられるストーリーに色を付けるのは主人公の一途さ。一目惚れから始まった彼女への恋愛感情はどこまでも愚直であり、故に周りから奇異の目で見られ滑稽なやり取りが発生することもある。しかし一途であるために犯人が露見した場面で主人公の決意がより重いものとなり、それまでの伏線の美しさが強く感じられる。
**「人生が整うマウント大全」著:マウンティングポリス 技術評論社**
登頂者(マウンティングピープル)たちの能力バトル開幕ッッ!お前の“普通”で相手を殴れーーーー!
強者は何気無い発言の全てが他者を傷つけていることに向き合え。弱者はマウントの型を取り入れて精神武装を身につけろ。
書籍の半分を占める圧倒的なマウンティング実例で、今日から実践可能な知識をインプット可能。マウンティングする“剛”の技だけではなく、マウンティングを受ける“柔”の技も身につく、全方位に特化した業界トップのハウツー本。
5年間Twitterでマウント警察をし続け、“体系的な学問”としてのマウントフルネスをぶち上げた筆者に涙が止まらない、感動の一冊。